Interview
福島の技と人をつなぎ、新たな価値を生み出す「福紡ぎ」
株式会社川口タンス店
畳のスツールから始まった、持ち帰る福島に。
郡山市赤木町に、本社を置く株式会社川口タンス店は、1953年に創業者が職人として桐ダンスなどを自製する家具店として始まりました。その後、海外家具の輸入・販売へと事業を拡げ、「E-comfort」ブランドを中心にインテリア商材のブラインドやラグも取り入れながら椅子の修理・張替など家具と暮らしに関わる事業を展開しています。
創業以来のものづくりの原点に立ち返りながら、これまで海外との取引や商品調達、販売を通じて培ってきたノウハウを生かし、新しい形でものづくりに取り組めないか。そうした考えから立ち上げたのが福島の地域資源や、職人の技術を活かした新ブランドの「福紡ぎ」です。
福島の地域資源を生かし、人と技術をつなぐ
福紡ぎは、福島県内に受け継がれてきた素材や技術、職人の仕事に目を向け、それらを組み合わせて新たなモノ作りに挑戦するというコンセプトです。地域の事業者や職人とつながり、それぞれが持つ技術や魅力を一つの商品として形にすることで、地域の価値を広く伝えていくことを目指しています。単に商品をつくるだけでなく、その背景にある人や地域の物語も含めて届けることを大切にしています。
第一弾として我が社で企画・開発を進めているのが、畳を座面に使った組み立て式のスツールです。座面の畳は須賀川市の久保木畳店さん、木のフレームは二本松市のたてぐ屋山岡さんへ製作を依頼。部品を分けて持ち運び、釘を使わずにはめ込んで組み立てられる仕様を検討しており、福島を訪れた人が商品を持ち帰り、自分の暮らしの中で使うたびに福島での体験を思い出せるように、という考えを「持ち帰れる福島」という言葉に込めています。

試作品は第31回二本松家具まつりで初披露しました。今後は商品の仕様や梱包、販売方法などを検討しながら、まずは福島を訪れる人に向けた販売や情報発信に取り組み、将来的には海外への展開も視野に入れていきます。
話を聞いたのは、法人卸営業部の太田雅一さんです。全国の家具店に商品を卸す営業を担当しながら、このブランドづくりに取り組んでいます。

太田「家具って、なかなか持って帰れないじゃないですか。そこに逆に着目して、持って帰る福島というのを、一つのテーマにしたんです」
ー学生には、どんなことを任せたいですか。
太田「福紡ぎは、資源や職人さんの技術を組み合わせたものを紡いでいきたい。そして新しい価値を形にしていきたいという思いがあります。一社だけで完結するものは、わざわざ福紡ぎでやる必要はない。二社以上が関わって、一つの商品をつくっていく」
太田「どことどこを足したらこうなるよね、というのを一緒に考えてくれたり。発信の仕方を一緒に考えてくれると、面白いかなと」
県内には、土地ごとに受け継がれてきた手仕事があります。あなたが見つけた組み合わせが、そのまま福紡ぎの次の商品の候補になります。
これまでの事業で培った経験を、新しい取り組みに
川口タンス店は、1990年代から海外家具の直輸入を始め、国内外のメーカーと直接やり取りをしながら、幅広い商品を取り扱ってきました。2003年には、デザインの権利期間が終了した名作家具を「ジェネリック家具」と名付けて販売。よいデザインを手の届きやすい価格で届ける「design for all」の考え方を大切にしてきました。

福紡ぎは、こうした既存事業と切り離されたものではありません。商品を見極め、企画し、つくり手と調整し、販売先へ届けるまでの経験を土台に、福島の地域資源を生かした商品づくりへと取り組みを広げるものです。海外から家具を仕入れて国内に届けてきた経験も、福島で生まれた商品を国内外へ届けるうえで生かしていきます。

地域の魅力を、商品を通じて伝える
「福紡ぎ」では、畳スツールに続く取り組みとして、石川町で育てられている藍を使い、椅子の座面に編み込むペーパーコードを染める試みも進めています。色を定着させる方法など、技術面の検討を重ねている段階です。商品そのものの魅力に加え、素材を育てる人や地域の背景も伝えることで、福島の多様な魅力に触れてもらうきっかけをつくりたいと考えています。
今後も、家具や暮らしの道具を中心に、県内の素材・技術・つくり手を結びつけながら、商品化の可能性を探っていきます。地域の事業者との連携を重ね、福島ならではの価値を持つ商品を継続的に生み出していくことが、福紡ぎの目指す方向です。
それぞれの技を持ち寄って一つの商品にする形を、今年から始めています。福島の手仕事を、世界に出していきたいという思いがその出発点です。
会社の新たな挑戦を、地域とのつながりから形に
川口タンス店に入社して数年。太田さんは全国の家具店への営業を担当し、日々の営業活動を通じて市場の動きやニーズを捉えてきました。また、郡山ではJC(青年会議所)などの地域コミュニティにも参加し、仕事とは異なる場でも人とのつながりを広げてきました。
そうした経験を重ねるなかで、会社として新たに取り組む「福紡ぎ」の構想も具体化していきました。福島の地域資源や職人の技術をつなぎ、新しい商品を生み出す。その立ち上げを担当する太田さんにとって、営業で培った視点や地域での出会いは、大切なヒントになっています。
太田「営業をしていると、様々な情報が入ってきますし、人脈も広がります。地域で活動するなかでも新しい出会いがあって、そうした経験を商品づくりにも活かしていけたらと思っています」
ー郡山で活動する魅力は、どこにありますか。
太田「郡山は生活もしやすいですし、自分から積極的に動けば、周りの人も関心を持ってくれたり、一緒に何かできないかと考えてくれたりするんです。地方だからこそ、自分の思いや考えを本気で発信した時に、周囲へ届きやすい面もあるかと感じています。何かを実現するために、わざわざ東京に出なければいけないという考え方にとらわれず、郡山にいながら自分たちにできることを形にしていければいいと思っています。」

営業活動で得た視点と、地域で築いてきたつながり。それらを活かしながら、会社として進める福紡ぎの取り組みを形にしていきます。
KNOT_を通じて期待すること
KNOT_への参加を通じて期待しているのは、学生の皆さんの新しい視点や専門性を取り入れ、ブランドの魅力をより多くの人に伝える方法を一緒に考えていくことです。たとえば、ブランドの見せ方やマーケティング、SNSなどを活用した情報発信、東京のショールームを活用した紹介方法など、商品やブランドの価値を届けるための企画について意見を交わしていきたいと考えています。
商品企画・プロデュースは川口タンス店が主体となって進めながら、外部の視点や知見も取り入れ、より伝わる形へと磨いていく。そのような協働を通じて、福島の地域資源やつくり手の魅力を、県内外、そして将来的には海外にも伝えていくことを目指します。
ーこの記事を読む若い人に、メッセージをお願いします。
太田「福島には、地域ならではの素材や技術、そして魅力的な人たちがいます。そうした地域の強みをつなぎ、新しい価値を生み出していくことが、福紡ぎの目指すところです。」
太田「何事もワクワクする気持ちを大切に、まずはやってみること。そして、さまざまな人と出会い、話をすること。自分で選んだ道を正解にしていくのは、自分自身の行動次第だと思います」
太田「福紡ぎを通して、福島の魅力を新しい商品という形にし、地域の外にも届けていきたいです。」
畳のスツールから始まった、持ち帰る福島に、_ _ _ _を。

