Interview
両親の活版印刷所を、スープの店にしました。この空間で、何をしますか
Cup Soup & Gallery SPACE ヒトヒガシ
両親の活版印刷の道具が残るこの空間に。
郡山市堂前町に、Cup Soup & Gallery SPACE ヒトヒガシという店があります。木・金・土に開いていて、スパイシーカレースープを出しています。
営んでいるのは堀越さんで、店は一人で回しています。この建物は、もとは堀越さんのご両親が営んでいた日東印刷所という活版印刷の工場でした。
店の奥には、そのころの道具が展示されています。活字を一本ずつ拾う文選箱、組んだ版を載せるゲラ、印刷機、大きな機械も置いてあります。

活字も少しですが一部残っています。両親の技術までは受け継げなかったため、文字を拾い、版に組み、試しに刷ってみるものの、思うようにはいきませんでした。

完全に揃ってはいないながらも、残っている道具を、次に活かしてくれる人を堀越さんは探しています。
ーこの活版の道具を、どうしたいと思っておられますか。
堀越「活かしてくださる方がいたら、と。デザイン系とか、こういうグリーティングカードを作ったら素敵だね、とか。カード式のカレンダーを作ってみようか、とか。そういう小物ができたら」
店の空間を使って、刷ったものをそこに並べて展示したり販売することも可能です。
発芽玄米とスパイスのスープ

店が開いたのは2024年5月5日です。スープに入るのは、GABAと食物繊維たっぷりの発芽玄米と、塩こうじに漬けた鶏肉、丸大豆、7種の野菜です。
たくさんのスパイスとハーブを使い、米は三穂田町の農家が手間をかけて育てたものです。農薬と化学肥料を使わずに野菜を育てる農家を応援する、と店では掲げています。
味は好評で、体が温まる、中から良くなった、という声が返ってきます。何度も足を運ぶ常連もできました。
電話番号は公開しておらず、問い合わせはInstagramだけで受けています。その月に開ける日は、毎月カレンダーにして出しています。

2階はレンタルスペースで、ヨガの先生、フットマッサージをする人、打ち合わせ、茶話会、料理の会と、使われ方はさまざまです。
ー木・金・土の3日にしたのは、どうしてですか。
開店した当初は月から金まで営業したり、土日も営業したりしてみましたが、試行錯誤の上、行きついたのがこの3日でした。
あなたが持っていく案も、同じように試されます。ここに合うやり方を、試行錯誤しながら一緒に考えられる店です。
名刺と伝票を刷っていた、日東印刷所

日東印刷所が刷っていたのは、名刺、伝票、チケットのナンバリング、ミシン目など、実用のものが中心でした。
ーおしゃれなカードやロゴのような仕事は、あったのですか。
堀越「うちは実用的なものが多かったと思います。今時のデザイン性のあるロゴとかカードとかとは違うかもしれませんね。」
お父さんは90近くまで、得意先に頼まれると刷っていました。工場が役目を終えたあと、堀越さんはこの建物をどう生かすかを考えます。
ーこの場所を自分で使おうと決めたのは、どうしてですか。
堀越「両親が大切にしてきた物、場所を、手離すのは嫌だったんですよね。」
ここを生かして、次に渡せる形でと考え、堀越さんは建物を建て直しました。以前とはまったく違う業態の、活版印刷機を展示した唯一無二の空間で、スープの店に生まれ変わらせました。機械や道具が纏う当時の空気が、落ち着く空間を作り出しています。
さまざまな仕事を経て、スープの店へ

堀越さんは、金融機関や、薬の出荷会社など、色々な仕事を移り、そのあと介護の仕事に就いています。お年寄りと接するのが好きで、仕事は楽しかったといいます。
2008年ごろ、友人から栄養の話を聞いて食べるものを変え、体が変わっていくのを感じました。

堀越「食べる物が変わると、やっぱり身体は変わってくる。そこは本当に実感しているので」
ースパイススープを選んだのは、どうしてですか。
最初はクラムチャウダーやオニオングラタンスープなど何種類か作ってみたうえで、堀越さんが最後に選んだのはスパイススープでした。
スパイスを集めるのが昔から好きで、さらっとしたカレースープなら、自分が毎日食べても飽きない、というのが決め手でした。温かいスパイススープを摂ることで代謝も良くなると堀越さんは言います。
手で刷れる、小さな一台

堀越「動かせるのは、このちっちゃい機械だけなんですよ」
動かせるのはテキンと言われる機械で、名刺やカードサイズのものを、1枚1枚手作業で刷ることができます。

木・金・土は、堀越さんがお店を営業する日です。日曜から水曜は店が休みで、休みの日の仕込みの時間以外なら場所を使えます。
具体的な時間や、鍵の扱い、厨房を使う場合の衛生の線引きなどは、これから学生と一緒に詰めていければと思っています。
もう一つ、これから始めたいのが、生ごみを堆肥にして農家に返し、その野菜が店に戻ってくる、という循環です。
堀越「バケツを持ってきていただいて、スタンプを押して。5個たまったら野菜でお返しします、みたいな。堆肥を自分で手作りしてみませんか、というワークショップをやったりとか」
こちらも、一緒に形にしてくれる人を待っています。
特技を持ち寄る、多世代の場

堂前町は、郡山の古くからの中心地です。いまこの店に来るのは、近所の方もいれば、InstagramやGoogleで見つけた人のほうが多いといいます。食にこだわる80代の方が気に入って通うこともあります。
堀越「年代じゃないんだな、と思うんです」

ーこれから、この地域とどう関わっていきたいですか。
堀越「みんながそれぞれの特技を活かしながら、地域を良くしていくような。価値観の合う人たちと、多世代・多職種で交流しながら」
堀越「誰かの役に立っていることで自分も喜べて、食を通じて健康になって、心が整って、自分の表現ができる」
郡山でこの店を続けることが、いまできることだ、と堀越さんは言います。食の発信をしながら次につなげたい、という言い方をしていました。そのうえで若い人には、こう言っていました。

堀越「いろんな可能性にチャレンジしてほしい。好きなことで人の役に立って。それをみんなで力を出し合って」
みんなで力を出し合う、というのが堀越さんの考えです。だから、一緒にこの空間を生かしてくれる人を待っています。
両親の活版印刷の道具が残るこの空間に、_ _ _ _を。
会社概要
会社名
Cup Soup & Gallery SPACE ヒトヒガシ
所在地
福島県郡山市堂前町
事業内容
スープとスイーツの店。ギャラリーを併設
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