Interview
家の価値は、本当に伝わっているのか SIMOKUを、若い世代の視点から見直したい
八光建設株式会社
無垢の木の家と、その伝え方に。
郡山市に、SIMOKU(しもく)という住宅ブランドがあります。
つくっているのは、無垢の木や石、タイル、珪藻土、漆喰などの自然素材を使った家です。建具や棚、収納なども、できるだけ既製品だけに頼らず、大工や家具職人の手仕事を取り入れています。

母体となる八光建設は、1964年に郡山市で創業した総合建設会社です。公共施設や工場、オフィス、商業施設などの建築・土木を中心に、住宅、家具、宿泊と、建築を軸に事業を広げてきました。
住宅の性能も、設計も、素材も、施工も。
SIMOKUには、自分たちなりに大切にしてきたものがあります。
ただ、代表の宗像紘太朗さんには、いま一つの問いがあります。
宗像「家の価値って、本当にちゃんと伝わっているんだろうか」
今回KNOT_を通じて若い世代に考えてほしいのは、その問いです。
家を選ぶときに見ている価値

SIMOKUではこれまで、WebサイトやSNS、見学会、イベントなど、さまざまな方法で自分たちの家づくりを伝えてきました。
無垢の木を使うこと。
職人の手仕事を生かすこと。
自然素材を使うこと。
住宅としての性能をきちんと確保すること。
設計にも妥協しないこと。
会社の中にいると、それぞれに意味があり、価値があることは分かっています。
一方で、それが家を選ぶ人にとって、本当に同じような価値として見えているのかは分かりません。
「自然素材の家」という言葉は、いまの若い世代にどう見えるのか。
無垢の木や職人の手仕事は、本当に魅力になるのか。
性能や設計、素材の違いは、どこまで家選びの判断材料になっているのか。
そもそも、これから家を持つ世代は、家に何を求め、何を価値だと感じるのか。
宗像さんは、そこを一度、外から見直してみたいと考えています。
宗像「住宅会社の中にいると、どうしても業界の常識で考えてしまうんです。自分たちでは当たり前になっていることも多い。だから、初めて見る人に率直に見てもらいたいんです」
本物が好きで、待てなかった頃

宗像さんは、若い頃から「本物」に妙なこだわりがあったと言います。
たとえばデニム。
最初からダメージ加工されたジーンズを見ると、どうしても違和感がありました。
宗像「ダメージって、本来は自分で履いて、時間が経ってできるものじゃないですか。最初からそれっぽく加工されているのが、当時はどうしても嫌だったんです」
一方で、若かった宗像さんには、その経年変化を何年も待つ忍耐もありませんでした。
そこで高校時代には、学ランの下にデニムを履き、少しでも早く色落ちさせようとしていた時期もあったと言います。
宗像「今考えると、それもだいぶ勘違いしてますけどね(笑)。本物が好きなのに、その“時間”だけは待てなかった」
ただ、年齢を重ねるにつれて、その感覚も少し変わりました。
早く完成させることよりも、使いながら少しずつ変わっていく時間そのものを楽しめるようになったと言います。
色が変わることも、傷がつくことも、使う人の癖が残ることも。
それらを劣化ではなく、その人だけのものになっていく過程として見るようになりました。
時間をかけて自分のものになる家

財布や靴、家具なら、素材を見て、つくり方を見て、長く使えるものを選ぶ人がいます。
でも家になると、なぜかその感覚が薄くなる。
宗像さんは、そこに以前から疑問を持っています。
SIMOKUがつくりたいのも、完成した瞬間が一番きれいな家ではありません。
住みながら傷がつき、色が変わり、ときには手を入れながら、その家族のものになっていく家です。
無垢の木は、時間とともに色や風合いが変わります。
建具や棚、収納なども、既製品の寸法に暮らしを合わせるだけではなく、大工や家具職人と一緒に、その家に必要なものをつくることがあります。
宗像「既製品は、あるものに自分が合わせることが多いですよね。そうじゃなくて、自分がこうしたいというところを形にする。それが家づくりの面白さだと思っています」
そうした家づくりを、これからも残していきたい。

一方で、それを残すためには、つくる側が「これは価値がある」と言っているだけでは足りません。
家を選ぶ人にとって、何が価値なのか。
自分たちが大切にしているものと、これからの世代が家に求めるものは、本当に重なっているのか。
そこから考え直す必要があると宗像さんは感じています。
若い世代に期待する外からの視点

今回、宗像さんが若い世代に期待しているのは、SIMOKUの考え方に賛同してもらうことではありません。
むしろ逆です。
「それ、本当に価値なんですか」
「自分たちの世代から見ると、こう見えます」
「自分なら、こういう家に価値を感じます」
そんな外からの視点を持ち込んでほしいと考えています。
住宅や建築の専門知識がなくても構いません。
デザイン、写真、映像、SNS、Web、マーケティング、編集、文章、AI。
何でもできる必要もありません。
自分なりの武器や視点を一つ持っている人と、一緒に考えてみたい。
宗像「建築に詳しい人じゃなくてもいいと思っています。むしろ、違う分野の感覚を持っている人に見てもらう方が、僕らが気づいていないことが出てくる気がしています」
聞きたい3つのこと

今回、一緒に考えてほしいことは、大きく3つあります。
1. これからの世代は、家の何に価値を感じるのか
性能なのか。
素材なのか。
デザインなのか。
立地なのか。
価格なのか。
経年変化なのか。
あるいは、それ以外なのか。
単に「20代」「30代」と年齢で区切るのではなく、どんな暮らしをしたい人が、何を家に求めるのかまで考えてほしいと思っています。
2. SIMOKUが大切にしているものは、どう見えているのか
WebサイトやSNS、実際の住宅、モデルハウス、イベント。
それらを初めて見たとき、何を感じるのか。
魅力に見えるところはどこか。
逆に、分かりにくいところや違和感はどこか。
SIMOKUが価値だと思っているものと、外から見える価値が本当に一致しているのかを見てほしいと思っています。
3. その価値を、どうすれば必要な人に届けられるのか
SNSでも、映像でも、写真でも、イベントでも、コピーでも構いません。
他のブランドやお店とのコラボレーションでもいい。
住宅会社がこれまであまりやってこなかった方法でも構いません。
誰に、どんな価値を、どう届けるのか。
SIMOKUという実際の住宅ブランドを使いながら、自由に考えてほしいと宗像さんは言います。
既存の答えに合わせない自由

住宅には、性能や法規、施工性、価格があります。
お客様の暮らしに長く関わるものだからこそ、安全性や品質について最終的な責任を持つのは八光建設です。
ただ、その範囲の中で、考え方まで会社に合わせてもらう必要はないと宗像さんは考えています。
ーまったく新しい考え方を持ち込んでもいいですか。
宗像「全然新しくていいです」
今回求めているのは、会社がすでに持っている答えを上手にまとめてもらうことではありません。
SIMOKUを今日初めて見た人だからこそ感じる違和感。
住宅業界の外にいるからこそ思いつく方法。
若い世代だからこそ持っている価値観。
それを、そのまま持ち込んでほしいと考えています。
あなたの視点が家づくりを変える可能性

今回のテーマは、学生向けにつくった架空の課題ではありません。
SIMOKUが、いま実際に向き合っているテーマです。
提案の内容によっては、WebやSNS、イベント、広報だけでなく、ブランドの見せ方や商品そのものに反映される可能性もあります。
受け入れには宗像さん本人のほか、テーマに応じてSIMOKUの営業、設計、広報の担当者も関わります。
必要であれば、実際の住宅や建築現場、職人や協力会社を見ることもできます。

宗像さんが期待しているのは、完成された答えではありません。
宗像「僕らが気づいていないことを見つけてほしいんです。それが結果的にSIMOKUを少しでも動かしたら面白いと思っています」
まずは、SIMOKUを見てください。
そして、感じたことを、そのまま持ってきてください。
これからの時代、家にはどんな価値が求められるのか。その価値を、どうすれば必要な人に届けられるのか。
SIMOKUという実際の住宅ブランドを題材に、一緒に考えてみませんか。
無垢の木の家と、その伝え方に、_ _ _ _を。
(2026年8月 取材 松井司)

